小説

怪談話の会

 ビビリ中学生のうちの息子に、根性をつけさせたいなと思っていたら、近所の墓場にある会館で、こっそり怪談話の会が夏休みの間、毎週催されるらしいとの情報を、友達が教えてくれた。

 「へぇ~、こっそり行われるんだね。『怪談話大会』とか大っぴらじゃなく・・・・・・」

 「そうらしいのよ。やっぱり、『墓場で遊ぶとは何事だ!』とか、先祖供養にうるさいご近所のおじいちゃん・おばあちゃんたちから苦情があるんじゃないかしら」

 「なるほどねぇ~。うちのビビリ息子に、一度行かせてみるわ」

 「何回か行ってるうちに、だんだん怪談話にも慣れて、それこそ肝試しに夜中に墓場をウロウロするぐらいの根性も座ってくるんじゃないかしら」

 「そうなるといいんだけどね」

 私は、嫌がる息子に、「肝試しでお墓をウロウロってことはないみたいだし、怪談話だけみたいだから、行っておいで!」と背中を押してやった。思春期の息子は、てっきり怖がって、まぁ行かないだろうと思っていたけれど、自分でもビビリを克服したいと思っていたらしく、恐る恐る怪談話の会へと向かった。

 息子は、おそらく一回だけ行って終わるだろうと思っていたら、これが意外と、二回、三回、四回・・・・・・と、毎週通い、日に日にビビリを克服して、自信につながっていったのか、表情も明るくなってきていた。

 「あんた最近、すっかり明るくなったね!」

 「そうかな?」

 そう答える表情も実にイキイキしていた。怪談話の会を、実に毎週楽しみにしている様子だった。

 最終回の日、私は主人とこっそり、会館の様子を伺いに行ってみることにした。するとそこは、怪談話の会どころか、男ばっかりが、ムワァ~~、っと群がった『猥談話の会』だった。

 「そりゃ、楽しいはずだわね」

 と、私は呆れて主人の方を向くと、主人は早速、来年度の入会申込書に自分の名前を記入し始めていた。

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弘法大師空海様、ご到着でございまーす!

 「いらっしゃいませ! ようこそお越し下さいました! お荷物お預かりいたします」

 「ありがとうございます。お世話になります」

 「ささ、どうぞ、こちらへ。・・・・・・、弘法大師空海様、ご到着でございまーす!」

 「いらっしゃいませ! 弘法大師空海様、ようこそお越し下さいました! お待ち申し上げておりました! ささ、こちらのお席へどうぞ!」

 「ありがとうございます。お世話になります。では、失礼いたします」

 「長旅、お疲れでございましたでしょう?」

 「いやいや、それほどでもございません」

 「こちら、粗茶でございます」

 「ありがとうございます。では、いただきます」

 「いかがですか?」

 「あ~、実においしいですな~。ホッと一息、落ち着きますね。五臓六腑に染み渡ります」

 「ありがとうございます。空海様は、大変厳しい修行をなさっていらっしゃるとお聞きしております」

 「さようでございますか。恐縮でございます。悟りへの道は、なかなか厳しいものがございます故、覚悟して、修行に励んでおります」

 「お腹も空いていらっしゃるのではないでしょうか?」

 「いえ、それほどでもございません」

 「どうぞ、ご遠慮なさらずに。空海様、何か、食うかい?」

 「ハハハ、この話の流れ、やはり、そう来るのでは? と、お待ち申し上げておりました」

 「さようでございますか! ハハァ~! 恐れ入ります~!」

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吾輩は猫であるつもり

 縁側で、ボケ~ッとしていると、我が家の猫が暇そうに、私に話しかけてきた。

 「あの~、ご主人」

 「何だね?」

 「あなたは人として生きていく上で、何枚ぐらい猫をかぶっておられますか?」

 「そうだね~、なかなかいい質問だね。君から見て、何枚ぐらいかぶってるように見えるかね?」

 「そうですねぇ~・・・・・・、40~50枚って、ところでしょうかね」

 「ハハハ、そう見えるかね」

 「いえいえ、ちょっと言い過ぎましたか。20~30枚ってところにしておきましょうか」

 「ハハハ、主人のご機嫌を損ねたら夕食にありつけないとでも思ったのかね。ハハハ、ま、減らしてくれて、ありがとう。で、君は、どうなんだい?」

 「吾輩ですか? 吾輩なんて生まれつき猫かぶってますから・・・・・・」

 「ハハハ、その通りだね。で、『猫かぶってる』ってことは、君は猫じゃないのかね?」

 「どうでしょうね。何せ、生まれつき猫かぶってやんすから、本当の自分ってものが、自分自身にも分かりやせん。一応、吾輩は猫であるつもりなんですがね」

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アルバム

 「アルバム?」

 「アルバム!」

 「そっち、アルバム?」

 「ない~」

 「じゃあ、これね!」

 「そっち、アルバム?」

 「アルバム!」

 彼には、彼らのやりとりがさっぱり分からなかった。

 「あの~・・・・・・」

 「はい、何でしょう?」

 「さっきから、『アルバム?』『アルバム!』とか『そっち、アルバム?』とか、何やったはるんですか?」

 「あ、何だ、そのこと。『ある?バームクーヘン?』『あるよ!バームクーヘン!』とか『そっち、ある?バームクーヘン?』の略ですわ」

 「なるほど。厳密には、『アル?バム?』『アル!バム!』とか『そっち、アル?バム?』ってことですね!」

 「さようでございます」

 「省エネですか?」

 「さようでございます」

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『あなたとならば・・・・・・』~プロポーズの返事~

 「この前の返事なんだけど・・・・・・、聞かせてくれないかな?」

 「うん、そうだよね。そろそろ・・・・・・返事しなきゃね」

 しばらく、二人の間に、沈黙が続いた。

 「ゆっくり考えてくれたんだよね?」

 「もちろんだよ! もちろん真剣に考えさせて頂きました!」

 「やっぱ、緊張するのかな?」

 「そうね、やっぱりね」

 彼女はうつむきがちに、両手を前でモジモジとさせながら、返事にためらっているような、ジラしているような、そんな様子だった。

 「一応、僕としてはさ、このまえ、君にプロポーズしたとき、君さ、何か返事らしきことを言いかけて、駆けて帰っちゃったよね」

 「そうだったよね」

 彼は、彼女の返事が待ちきれず、少しでも彼女の心に弾みをつけようと、答えるきっかけを促し始めた。

 「そのとき、確かさ・・・・・・、その~、『あなたとならば・・・・・・』、みたいなことを言いかけてくれていたと思ってるんだけど・・・・・・」

 「そうだったよね」

 「それってさ、僕としては、期待していいのかなぁ~なんて思いながらさ、今日は返事を聞きに来たんだけどさ、・・・・・・、その~~、あー! 緊張するなぁー!」

 「ウフフ!」

 「それって、やっぱ、そういう方向で考えちゃって、よかったんだよねっ! ねっ!」

 「きっとそう思ってくれているんだろうなぁって思って、今日は、私、正式にキチンと、返事しに来たの」 

 「あ~、緊張するな~・・・・・・。では、お願いします!」

 「このまえ、私があなたに言いかけたのは、『あなたとならば』じゃなくて、『あなたとタラバ』って、言いかけたの」

 「『あなたとタラバ』って!?」

 「やっぱ、真剣に、プロポーズしてくれているのに、すぐ返事できなくて、逃げて帰っちゃったんだけど・・・・・・」

 「うん、それで」

 「私、あなたとタラバガニを天秤にかけてたの!」

 「えっ?! と、言いますと?」

 「私、誰かと結婚する人生より、小銭が貯まったら、タラバガニをときどき一人でかぶりつく人生を歩みたいのよねぇ~」

 「って、ことは?」

 「お断りします!」

 「えっ! そうなの!」

 「ごめんなさい!」

 「だったら、このまえの、あの思わせぶりに逃げ帰ったのは、何でなの?」

 「真剣にプロポーズしてくれているのに、いくらデリカシーのない私でもさ、さすがに『あなたとタラバを天秤にかけてます!』、なんて言えないしさ、ましてや即答で、『タラバガニ!』って言えなかったわよ」

 「でも、あのとき、僕の申し出に、うれし泣きのような素振りで振り返って、僕にその顔を見せないように走り去って行ったじゃない! あれは何だったの?」

 「あれは、あなたとタラバを天秤にかけてる私自身に対して、おかしくっておかしくって、笑いそうになってたのよ。『私って、ほんと、変よね~』、みたいな!」

 「僕は、タラバガニに負けたってこと?」

 「そうなりますね」

 「君の生活信条って?」

 「飽食日本! 飽食日本! 飽食ニッポ~~ン!」

 「断ってくれて正解だったみたいだわ」

 

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出番

 観客席が満席の体育館は、熱戦続きで、場内大興奮だった。

 彼は精神を集中していた。

 「さぁ、いよいよ出番だな」

 「はい!」

 監督の呼びかけに、彼は胸に闘志を秘めつつ、静かな返事を返した。

 「緊張してるのか?」

 「全然してません!」

 「そうだ!今さら緊張したって始まらないんだ!」

 「はい!」

 「試合は、もう目の前なんだ!」

 「はい!」

 「今までやってきたことを、そのまま出せばいいんだ!」

 「はい!」

 「お前の実力なら勝てる!」

 「はい!」

 「お前の出番だ!!」

 「はい!!」

 「相手も緊張してやがるんだ!!」

 「はい!!」

 「お前の出番だ!!」

 「はい!!」

 「堂々と出て行ってやれ!!」

 「はい!!!!」

 彼は、気合いとともに、堂々と会場の出口から出て行った。

 彼は、『試合の出番』を、『会場を出て行く順番』と間違えたらしい。

 「あいつは緊張しまくっとったんかい!」

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モーレツ主婦

 「さ、掃除も終わったし、ちょっと休憩しよ」

 彼女はほんの一息、テーブルに座り、コーヒーを飲んだ。

 「さ、ついでに、明日の分の掃除しとこ!」

 彼女は、ついでに、明日の分の掃除をし始めた。

 「さ、掃除も終わったし、ちょっと休憩しよ」

 彼女はほんの一息、テーブルに座り、コーヒーを飲んだ。

 「さ、ついでに、あさっての分の掃除しとこ!」

 彼女は、ついでに、あさっての分の掃除をし始めた。

 「さ、掃除も終わったし、ちょっと休憩しよ」

 彼女はほんの一息、テーブルに座り、コーヒーを飲んだ。

 「さ、ついでに、しあさっての分の掃除しとこ!」

 彼女は、ついでに、しあさっての分の掃除をし始めた・・・・・・。

 彼女はこんな調子で、掃除機で床や畳を吸って吸って吸いまくり、家中、ぞうきんで拭いて拭いて拭きまくった。

 旦那が帰ってきたときには、擦り減りすぎたのか、彼女が掃除機で吸って吸って吸いまくった床や畳は、すっかり跡形もなく、ぞうきんで拭いて拭いて拭きまくったところも、すっかり跡形もなくなっており、彼女は地面に掃除機をかけていた。

 家がなくなってしまっていた。

 「ただいま!」

 「あ、おかえり!」

 「何してんの?」

 「ちょっと途中で分からなくなっちゃったんだけど、今ね、確か・・・・・・、うん百年後か?うん千年後?の、今日の掃除をしてるところなのよ」

 彼女は、掃除大好き、モーレツ主婦だった。

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なつメロ

 「あっ!しまった!忘れてた!ちょっとだけでも見れるか!」

 私は、慌ててテレビをつけた。今夜は、久しぶりになつメロ番組でなつメロに浸ろうと思っていたのに、うっかりと忘れていたのだ。

 「あ、ちょっとだけでも見れそうだ」

 私はテレビの前に座椅子を置いて、「ヨッコラしょ!」と座った。男女二人の司会が、ゲストとしゃべっているようだった。

 「・・・・・・はい!そうなんです!今回限りの大ご奉仕価格でございます!」

 「えーっ!ほんとにー!」

 「で、今日は、さらにおまけがあると聞いているんですが・・・・・・」

 「はい!そうなんです!今回に限りまして、5つセットをお買い上げ頂きますと、なんと!もれなく!もう1つプレゼントさせて頂きます!」

 「えー!このお値段で、さらにもう1つ頂けちゃうなんてー!・・・・・・」

 どうやら、夏のメロンの通販番組だったらしい・・・・・・。

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学級新聞

 クラス替えをしたばかりの小学生の息子が、クラスで最初の学級新聞を作ったと、私に見せてきた。

 「へぇ~そうなんだぁ。どれどれ、見せて!見せて!」

 「クラス変わったばっかりだから、みんなの自己紹介が載ってるんだよ~」

 「そうだねぇ~、たくさん書いてあるねぇ~。みんなそれぞれに、いろんなこと書いてるねぇ~。おもしろそうな子がたくさんいるじゃん!」

 息子の自己紹介を見てみると、

 『 自分の長所 : 両足

   自分の短所 : 真ん中の足 』

 ま、確かに、長い所と短い所ではあるけれども・・・・・・。

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枕を濡らす日々

 寝床で、うつ伏せに寝転んで、寝る前の読書をしていた。

 部屋の灯りは、枕もとにあるスタンド一つ。電球色のやわらかい灯りが、真っ暗な部屋に、ポッと、暖か味を添えていた。

 そして、私はそのまま、眠りについた。

 と、そのとき!

 フタをしていなかったペットボトルに、私は手をあててしまった。

 そして、そんな日々が続いた・・・・・・。

 枕を濡らす、実にせつない、物語・・・・・・。

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食育

 私は幼稚園に教育実習に来ていた。私が実習に来ているこの幼稚園は、特に食育に厳しかった。まだ、私は実習初日なので、先生が子供たちに指示を出したときには、子供たちと同じように大きな声で返事するように言われていた。

 「はい、それではお昼ごはんにしましょうね~!」

 「は~~い!」

 「今日は、和食で~す!」

 「は~~い!」

 「今日は、茶碗蒸しですからね~!」

 「は~~い!」

 「それではみなさん、手を合わせて下さい!いただきます!」

 「いただきます!」

 子供たちも元気いっぱいお昼ごはんを食べ始めた。食育には厳しい幼稚園と聞いていたので、子供たちの前だし、私自身が手本にならないような偏った食べ方はしてはいけないと、いつも以上に気を配っていた。ごはんを食べ、茶碗蒸しを食べ、お味噌汁を食べ、お茶を飲みって感じで、バランスよく、よく噛んで、食べていた。

 すると、どうだろう。食育に厳しいはずのこの幼稚園の子供たちは、茶碗蒸しばっかり、お味噌汁ばっかり、お茶ばっかり、偏りすぎた食べ方をしているではないか!それも先生方まで!一体、どうなってんだ!

 と、疑問に思っていると、園長先生が、パン!パン!と両手を二回鳴らした。

 「はい、皆さん、ちょっと食べるのストップしてくれますかぁ~」

 「は~~い!」

 「今、先生たちとのお約束を守らないで、お昼ごはんを食べている人がいましたね~」

 「は~~い!」

 あ、やっぱり行儀が悪い子がいると、こうやってマナーを徹底させるってことか?やっぱり噂どおりの厳しさ爆裂ってこういうことか!でも、先生方まで、偏っていたぞ?

 「お約束を守っていなかった人は誰ですか~?さん、はい!」

 「教育実習の先生で~~す!」

 私は子供たちから、満場一致のご指名を受けた!

 「えっ?! 何で?!」

 私はまったくわけが分からなかったが、キョトンとしたまま、気づけば何となく立ち上がっていた。まったく何の心積もりもしていないのに、いきなり国会で総理大臣に指名されたような光景だった。すると、園長は続けた。

 「はい!そうですね~!みなさん、よくできましたね~!」

 「は~~い!」

 「お約束の守れない人には、出て行ってもらいましょうね~!」

 「は~~い!」

 私は、体格のいい二人の警備員に片腕ずつ抱えられ、退場を命じられた。私は納得がいかず、子供たちの前で恥ずかしかったが、警備員たちに引きずられながらも大人気なく、園長にそのわけを問いただした!

 「園長!園長!どうしてなんですか!ど、どうして私が約束を守っていないことになるんですか!わけが分かりません!」

 「それじゃあ、皆さんで、そのわけを教えてあげましょうね~」

 「は~~い!」

 「さん、はい!」

 「『茶碗蒸し』の日は、『茶碗無視!』。ごはんを食べてはいけません!」

 「はい!よくできました~!」

 

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テーピング

 いよいよ試合が始まる。負傷している私は、トレーナーに頼んだ。

 「テーピングお願いします」

 「よし!まかせとけ!」

 私はトレーナーにテーピングをしてもらっている間、目を閉じて、集中力を高めていた。

 しかし、緊張しているせいなのか、何だか集中できず、テーピングがくすぐったく感じてしまう。負傷の影響なのか、きつく感じるテーピングが、くすぐったいだなんて・・・・・・。感覚がおかしくなっているのか?私は不安がよぎっていた。

 あまりにくすぐったいので、精神集中どころか、思わず吹き出してしまい、思わず目を開けてしまった!

 「そら、くすぐったいわ!俺頼んだん、テーピング!あんたしてんのん、手ーピンク!」

 トレーナーは私の手をピンク色に塗っていた。

 「ピンク色で、相手チームに色仕掛け・・・・・・」

 「できません!」

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稚内

 「今日は奥さんお留守?」

 「そうなんだよ。うちのおっかない家内は、稚内なんだ」

 「へぇ~そうなんだ。会社の旅行か何か?」

 「おっかない家内だから聞っかない!」

 「へぇ~」

 「あ、携帯鳴ってるわ。あ、噂をすればってこのことだぁ~ねぇ~。稚内のおっかない家内からだわ。ごめん、ちょっと出るね!」

 「どうぞどうぞ!」

 「もしもし~、どうしたの?」

 「今、稚内なんだけど・・・・・・」

 「そうだよね。で、君、何しに稚内へ行ったの?」

 「ちょっと輪っかを探しに来たんだけど、稚内にその輪っかないのよねぇ~」

 「あ、そうなんだ」

 「で、今から何しようかって考えてるんだけど、いいアイデアが稚内で湧っかないのよねぇ」

 「そうなんだ。そりゃ、困ったねぇ」

 「What can I do in Wakkanai Wakkanai?(ワッキャナイ ドゥー イン ワッカナイ ワッカナイ?)」

 「あれ? 何で、稚内、稚内なの?」

 「輪っかない稚内!」

 「なるほど!でもさぁ、『輪っかない稚内で、What can I do?(ワッキャナイ ドゥー:私は何ができる?)』なんて、君からそんなこと聞かれたって、僕に分かるわっきゃない」

 「だよね~。バイバイ!」

 「バイバイ!」

 「それにしても、お洒落な夫婦もいるけど、君たちは駄洒落な夫婦だねぇ~」

 「年を取ったって言うっきゃない!」

 「そこまで言われちゃ、苦笑いするっきゃない!」

 

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嗅覚

 「よくここだって分かったねぇ」

 「嗅覚が強いからね」

 「階段で、怪談話してるってニオイ、嗅いだん?」

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マスターのお心遣い

 僕は、よく行く喫茶店の窓際席で、外の景色を見ながら、ぼんやりとホットコーヒーを飲んでいた。

 「景気悪そうな顔して、どうしたの?」

 他にお客さんがいなかったということもあり、マスターが心配して声を掛けて来てくれた。

 「あ、マスター・・・・・・」

 「ストレスたまってるの?」

 「そうですねぇ~。このところ、いろいろありましてねぇ」

 僕は、浮かない顔そのままに、マスターと言葉を交わした。

 「その様子じゃ、長いこと、ケーキなんか食べてないんだろ?」

 「は、はい、そうですね・・・・・・」

 「さ、ほら!これ!」

 「えっ?!」

 「最近、うちで売り出し中の、手作りケーキ!他のお客さんが来ないうちに、さっ、食べちゃいな!」

 「えっ!?いいんですか!?」

 「あぁ~、もちろん!景気づけだ!食べな!」

 「ありがとうございます!いただきます!」

 僕は、マスターのやさしさが心にしみて、何だか泣けてきた。

 「おいおい、泣くなよ!」

 「すいません!でも、マスターのお心遣いがうれしくって・・・・・・」

 「いやいや、そんなそんなぁ~。どうだ、うまいか?!」

 「ハイッ!うまいっす!めっちゃくちゃ、うまいっす!」

 「おぉ~、いい食いっぷりだぁ~!その笑顔!その笑顔!その笑顔が見たかったんだよ!」

 「ありがとうございます!」

 「その食いっぷり見てると、何だか、こっちまでうれしくなっちまうよ!よしっ!他のお客さんが来ない間、どんどん食べな!こうなりゃ、景気づけだ!遠慮しないでどんどん食べな!」

 「ありがとうございます!」

 マスターのやさしい人柄と、そのやさしい人柄がぎっしり詰まったケーキのやさしい味が、僕のちっぽけな悩みなんて忘れさせてくれた。

 久しぶりに、「人のあたたかさ」と「やさしい味」に触れ、すっかりと僕は癒された。気分スッキリ!で、マスターにお礼を言った。

 「マスター、ありがとうございました!そろそろ帰ります」

 「気分転換できたかい?」

 「ハイッ!おかげさまで!」

 「よかったよかった」

 「お勘定お願いします」

 マスターはレジを軽く打ち出して、

 「はい、そしたら、税込みで52,500円になります!」

 「えっ!?」

 「えっ!?って、何が?」

 「ケーキって、その・・・・・・」

 「ケーキ10個、君、食っただろ?」

 「は、はい」

 「素材にもこだわった、手の込んだ手作りケーキ1個5,000円×10個だから、50,000円!それに消費税2,500円!ホットコーヒー代、税込み420円は、サービスしてやってるんだよ!何か、文句ある?!」

 「ケーキは、その・・・・・、『景気づけに!』って、マスターのおごりじゃぁ~~・・・・・・」

 「何を寝ぼけたこと言ってるんだね、君は~。『景気づけに!』って、そんな都合よく解釈されちゃぁ困るなぁ・・・・・・。サービスなんて、一言も言ってないだろ~」

 「そ、そんな・・・・・・」

 「『景気づけ』じゃなくて、うちの裏メニューの、『ケーキ漬けコース』なんだよぉ~」

 「おっ、おっ、鬼だぁ・・・・・・」

 「うちも景気が悪いんでねぇ~・・・・・・」

 厨房の奥から、ポキポキッ!ポキポキッ!と指を鳴らしながら、イカツイお兄さんたちが、こちらを覗いていた。

 「マスター、ここって、そういうお店?・・・・・・」

 「そう!そういうお店」

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ちらしずし

 「あ~、久々にちらしずしが食べたいなぁ~」

 「えっ!?ちらしずし食べたいの?」

 「そうだけど、何で?」

 「ちらしずしって、寿司飯の上に、チラシ広告が乗ってるんでしょ?」

 「おそらく、そう来るだろうとは覚悟していたけれど、一応言っておこうか?」

 「どうぞ!」

 「わしゃ、ヤギか?!」

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カッターシャツ

 「ちょとカッターシャツ取って」

 「どの?」

 「そのカッターシャツ」

 「『その』って、どの?」

 「『どの?』って、その」

 「せやから、どの?」

 「『どの?』って、そこにそれしかないやん!」

 「あ、これ?」

 「それ!」

 「えっ、これ?」

 「それー!!!」

 「これ、『買ったぁシャツ』ちゃうで!もらってんで!」

 「あっ!そうでっか!じゃ!その『もらったーシャツ』取って!」

 「はい、どうぞ!」

 「あ~しんど!」

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意地

 「あ、もしもし、○○商事の○○と申しますが・・・・・・」

 「いつもお世話になっております」

 「あ、秘書の方ですか?」

 「さようでございます」

 「社長は、お出掛けですか?」 

 「さようでございます」

 「あ~、やっぱりお出掛けですかぁ・・・・・・」

 「さようでございます」

 「今思うと、このまえそんなことおしゃってましたわ~。社用ですか?」

 「さようでございます」

 「社用?!」

 「さようでございます」

 「やっぱり社用でお出掛けでしたかぁ~」

 「さようでございます」

 「ほんとに、社用?!」

 「さようでございます」

 「『社用』って、十回言って下さいますか?」

 「社用、社用、社用、社用、社用、社用、社用、社用、社用、社用」

 「社長のお出掛けは、社用?」

 「さようでございます」

 「参りました!」

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受験

 今日は息子の受験日。さすがに息子は緊張している様子だった。

 玄関で靴を履いて、いざ!試験会場に向かおうとしている息子に、「がんばれよ!」と声を掛けたいところだが、必要以上にプレッシャーを感じてもいけないので、笑かしてリラックスさせてやろうと、「がんばるなよ!」と言って、息子を送り出してやった。

 帰ってきた息子は、受験が無事に終わった安堵感から、実にホッとした表情浮かべて、「がんばらなかったよ」と、軽く余裕の笑みを見せた。

 さすがにこちらもホッとした。

 数日後、合否を知らせる速達が家に届いた。

 ほんとにがんばらなかったらしい・・・・・・。

 いやいや、そんなはずはない。がんばったけれど、残念ながら・・・・・・、ということだろうと、息子に問いただしてみたら、やっぱりほんとにがんばらなかったらしい・・・・・・。

 親の言うことを忠実によく聞く息子でして・・・・・・。

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播磨の人

 「今日のお客さんは、どっから来はりま?」

 「兵庫県の播磨の方から来はりま」

 「いつごろ来はりま?」

 「もうすぐ来はりま」

 「あっ!玄関の方から、『お客さん北播磨から来たはりま~!』って呼んだはりま!」

 

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ラッパークッキング

 ラップのリズムで、クッキングしようぜ!ベイビー!YEAHHHHHH!!!!!!

 ~ ワン!トゥー!スリー!フォー!! ~

 昨日のカレーは冷たいYO!

 大きなお皿を準備しYO!

 お皿にごはんを盛り付けYO!

 ごはんにカレーをたっぷりYO!

 かけたらラップで覆ってYO!

 レンジでチンすりゃ食べれるYO!

 ラップは必ずいるのかYO?!

 なくてもチンすりゃ食べれるYO!

 おいらは熱いの苦手でYO!冷たいカレーが食べたいYO!

 冷たいカレーが食いたきゃYO!

 そのまま食ったらいいじゃんYO!

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ドライヤーくん

 彼女の心は冷えきっていた。

 「お嬢さん、私があなたの心を温めてあげますよ」

 「えっ!ほんとに!ありがとう!やさしいんだね、ドライヤーくん!」

 ドライヤーくんは、親切・丁寧に、思いやりを込めて、最高のおもてなしの心で、彼女のその冷えきった心を温めた。

 幸か不幸か、彼女の心は、カラッカラに乾いてしまった。

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新居ご訪問

 「はい、もしもし・・・・・・、あ、久しぶり~~!元気~~!・・・・・・えっ?あ、そう!みんなもいるんだぁ」

 日曜の昼下がり、新妻の携帯電話が鳴った。どうやら、友達かららしい。

 「うんうん・・・・・・、えっ?!あっ、今、近くに来てるの~。うんうん・・・・・・、あっ、そこまで来てるんだったら、左手にタバコ屋さん見えるでしょ?・・・・・・うん、そうそう。そこの角をね、左に曲がってくれたら、マンションが見えるでしょ?・・・・・・そうそう、そのマンション。・・・・・・、えっ?何?あ、お菓子買って来るって?あ、そんなの気にしなくていいのよ、手ぶらで来てくれたら。・・・・・・そうそう、新居のお知らせ送ったときにさぁ、『お近くにお越しの際は、どうぞお気遣いなく、手ぶらで来てくださいね!』って書いてたでしょ。だから、気遣わないで~。もうほとんど到着してるんだし」

 新妻は電話を切ると、

 「突然ごめんね~、友達がさぁ、もうそこまで来てるのよね。ね、いいでしょ?」

 と、私に両手を合わせて謝りながらそう言うので、

 「もちろん!もちろん!どうせ今日は何の予定もなくて暇なんだし。それに、部屋も掃除したところできれいだし、ちょうどいいじゃない。僕もまだ会ってない君の友達に挨拶しておきたいし」

 と、私は快く了解した。

 「手ぶらで来るって言うから、悪いんだけど、あなたが食べるの楽しみにしていた昨日買っておいたケーキだけど、出してもいいかな?」

 「もちろん!もちろん!」

 すると、ほどなく、ピンポーン!っと鳴った。

 「どうぞ~。鍵開いてるから~、入ってきて~」

 インターホンで妻がそう答えると、玄関ドアが開き、妻の友達たちが上半身裸でノーブラ、ブラジャーの代わりに両手でお乳を隠しながら、

 「おじゃましま~す!『手ブラ』ですいませ~ん!」

 と、元気よく、ぞくぞくと我が家に入ってきた。

 手ブラですいませんだなんて、そんなこと言わないで、毎日『手ブラ』で来て下さいって感じだぜ!

 一通り挨拶を済ますと、

 「じゃ、僕、コーヒー入れるわ。みなさん、ミルクと砂糖は一つずつでいいですか?」

 「は~~い!」

 妻の友達たちから元気な返事が返ってきた。そして、その中の一人から、リクエストがあった。

 「ご主人、すいません」

 「何でしょう?」

 「すいませんが、コーヒーにミルクと砂糖一つずつ入れてもらって、かき回してもらえますか?」

 「はい、もちろん!」

 「それで、私たちにコーヒーを飲ませて頂いて、ケーキも食べさせてもらえますか?」

 「もちろんいいですけど、どうされましたか?」

 「何分、私たち、『手ブラ』なもので、手が離せないくらい忙しいんですぅ~~」

 私としては、手を離して欲しいのだが・・・・・・。

 

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持ち物

 「明日、何持って行ったらいいかなぁ?」

 「そうねぇ、特にこれといって持って行くようなものってないと思うよ」

 「手ぶらで行くのもちょっとねぇ」

 「不安だったら、まぁ、ハンドバック一つぐらい持って行っとけばいいんじゃない。ま、それぐらいだったら、荷物にもならないし、邪魔にもならないしさ」

 私はそのように伝えてその日は帰宅した。

 そして翌朝、待ち合わせ場所に行くと、向こうの方から何かを引きずってくる彼女を見つけた。

 「遅くなってごめんなさいね。これ、ほんと重たくって重たくって。一つぐらいだったら荷物にもならないし、邪魔にもならないって、あなた言ってたから持ってきたけど、これ一つだけでも、けっこう荷物にもなるし、邪魔にもなるみたいよ」

 彼女は、何を聞き間違えたのか、サンドバックを一つ引きずってきた。

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ござる屋

 近代科学の進歩した、この平成の世の中に、プチ狂言マニアの店主が営む「ござる屋」と言う小さな店に、プチ時代劇マニアのお客人が参ったようでござる。

 「おじゃまするでござる」

 「よう来られたでござる」

 「そのような温かきお出迎え、誠にありがたき幸せにござる」

 「お客人、おぬし、なかなかの時代劇好きのようでござると、お見受けしたでござる」

 「はてさて、もう見抜かれたでござるか?」

 「なになに、同じようなニオイがするでござる」

 「さようでござるか」

 「して、今日はどのようなご用件でござる?」

 「いやいや、『ござる屋』と言うユニークな屋号が目に入ったでござるゆえ、ちょっと立ち寄らせてもらっただけでござる」

 「さようでござるか。ごゆるりして参られると、よろしいでござる」

 「何となく、無理のある言い回しのようでござるが?」

 「ま、ま、気にしないで頂きとうござる」

 「分かり申したでござる」

 「礼を言うでござる」

 「して、ご亭主、これは何でござる?」

 「茣蓙(ござ)でござる」

 「いろいろな種類があるでござるな」

 「さようでござる」

 「して、ご亭主、これは何でござる?」

 「笊(ざる)でござる」

 「ほほう、こちらもいろいろな種類があるでござるな」

 「お褒めにあずかり、ありがたき幸せにござる」

 「して、ご亭主、他に何かござるか?」

 「申し訳ないでござるが、当店は茣蓙(ござ)と笊(ざる)のみ販売している店でござる」

 「さようでござるか?!」

 「さようでござる」

 「それで屋号が『ござる屋』でござるか?」

 「さようでござる」

 「では、ご亭主、特に『ござる言葉』を使う慣わしになっているというわけではないのでござるか?」

 「さようでござる」

 「さようでござるかぁ~。しかし、『ござる屋』とは随分と、時代劇をニオわせるネーミングでござるな」

 「いやいや、お客人、何分、平成の世でござる。何でもかんでも、縮めて言うのが好きな人がたいへん多ござるゆえ、『ござ』と『ざる』を縮めただけでござる」

 「ほほう、意外にも、根っこの発想は、今風(いまふう)でござるな」

 「さようでござる」

 

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パソコン教室

 「マウスの左側のボタンを、人差し指で一回押すことを、『クリック』と言います。みなさん、ここまでは、いいですかぁ~?」

 「は~い!」

 「そして同じく、マウスの左側のボタンを、人差し指で二回押すことを、『ダブルクリック』と言います。みなさん、ここまでも、いいですかぁ~?」

 「は~い!」

 「ややこしかったら、一回マウス、二回マウス、みたいな感じで覚えてもらってもいいと思いますよ」

 「は~い!」

 なぜかアメリカかぶれの生徒たちは、ノートに、『マウス、Two マウス』と書いていた。

 彼らは、人命救助の非常事態のときに、なぜかマウスを『クリック、ダブルクリック』しそうだ。

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ごま

 「なぁ、ちょっと頼むわ。ほんまに、ちょっとだけでええから、誤魔化して~な~。ほんま、頼むわ。ちょっとぐらい誤魔化してくれてもダイジョウブやろ」

 私は、必死に頼み込んだ。

 すると、胡麻貸してくれた。

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過ち(3)

 彼は、友人たちと山登りに来ていた。

 ちょうどお昼ごろ、お弁当を食べるのにちょうどいい場所に着いたので、そこでお弁当を食べることにした。

 彼らは、ワイワイガヤガヤと、賑やかにお弁当を食べていた。そして、のどを潤そうと、水筒に手を伸ばしたときだった! 

 彼は突然、頭を抱え、落ち込み始めた。

 「どうしたの?!具合でも悪いの?頭痛いの?」

 誰もが心配して彼に声を掛けた。

 「『正しく生きたい』、ただそれだけなのに・・・・・・」

 彼は涙ぐんでいた。 

 「『水筒』って、『水』の『筒』なのに、水以外のお茶を入れてしまうなんて・・・・・・」

 彼は自らの過ちに、とめどなく泣き崩れていた。

 「あ、これ、お茶入ってんねんて!おまえ飲めへんねんやったら、俺らもらうわ。お茶いる人、は~~い!」

 親切な彼の友人たちは、全員手を挙げて、彼の代わりに彼の水筒のお茶を全部飲み干した。自分たちの水筒のお茶を減らすことなく・・・・・・。

 

 

 

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武士の言い分

 「ちょっと!ちょっと!あんたたち!何もめてるの~?!」

 「あ、木村のおばちゃん!こんにちは!」

 「はい、れいちゃん、こんにちは!で、どうしたの?」

 「だってね、武士(たけし)くんが、ケーキ食べないって言うんだもん!」

 「あら、おいしそうなケーキじゃない!」

 「おばちゃん、これ、私作ったの!」

 「へー!れいちゃんが作ったの!上手だね~!」

 「武士(たけし)!あんた、食べないの?」

 「武士(ぶし)は食わねど高楊枝!」

 「おばちゃん、武士(たけし)くん、さっきから、こればっかり言うのー!」

 「へぇ~、そうなんだ。で、今まで何やってたの?」

 「チャンバラごっこ」

 「あ、れいちゃん、それでだわ」

 「え、何が?」

 「今、きっとねぇ、武士(ぶし)になりきってるのよ。うちのキムタケは」

 「え、そうなの~。チャンバラごっこをね、ちょっと休憩してね、ケーキ食べよって、私言ったんだよ~」

 「れいちゃん、ほんとにごめんねぇ~。この子ねぇ、なりきったら、ほんと、とことんなりきっちゃうからね。ほんとバカだよねぇ~」

 「男の子って、おもしろいね、おばちゃん!」

 「そうでしょ。武士(たけし)!あんた、ほんとにケーキ食べないのね?せっかく、れいちゃんが作ってくれたのに!」

 「武士(ぶし)は食わねど高楊枝。ましてや、西洋ものの菓子など、口にできませぬ」

 「まったく何言ってんだろうねぇ、このバカ息子は!鎖国じゃあるまいし。れいちゃんがせっかく作ってくれたって言うのにさ!時代劇俳優さんだってね、ケーキ大好きな人いっぱいいるんだよ!このバカ!」

 「じゃあ、おばちゃん、一緒に食べよ!」

 「え、おばちゃん食べていいの?」

 「いいの、いいの!」

 「そうだね、武士(たけし)の言い分があんな調子だもんね」

 「そうだよ」

 「じゃ、武士(たけし)の言い分を尊重して、私たちが西洋ものの菓子を口にするとしますか!」

 「はい、これ、おばちゃんの」

 「はい、ありがとう!じゃあ、いただきま~す!」

 「いただきま~す!」

 「おいしいね~!れいちゃん、ほんとに上手だね~!」

 「え、ほんと!よかった!」

 「あんた、大きくなったらケーキ屋さんだね!」

 「そんな~、おばちゃん、褒めすぎだよ~」

 「拙者にも、一口だけ残しておいてはくれませぬか?後ほど、毒味を・・・・・・」

 「なりませぬ!こんなおいしいものを毒味などと、無礼千万!れい殿、それでよろしゅうございまするな?」

 「よろしゅうございます」

 「して、武士(たけし)の言い分は、却下つかまつりまする」

 「味見を・・・・・・」

 「なりませぬ」

 「ほんのちょっと・・・・・・」

 「なりませぬ」

 「ほんの・・・・・・」

 「なりませぬ」

 「ほ・・・・・・」

 「なりませぬ」

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箱入り娘

 女友達の多い友人が、このまえ、「女の子紹介してやろうか?」なんて聞いてきた。彼の彼女の友達を紹介してくれるらしい。何でも、箱入り娘らしく、話題が弾むのか少々心配ではあったが、会ってみることにした。

 約束の場所に行くと、友達とその彼女が待ってくれていた。

 「お待たせ~」

 「いやいや、まだ時間早いから」

 彼のあとに続いて、彼女も挨拶してくれた。

 「こんにちは。お久ぶりです。今、電話があって、もうすぐ来ますから」

 僕たち三人はたわいもない話をしながら、その箱入り娘を待った。すると、ほどなく、

 「ちぃ~~っす!!お待た、お待たの、お股おっぴろげ~~!!ちぃ~~っす!!」

 思い描いていた箱入り娘とはほど遠い、キンキン金髪枯れまくりの、ガンガンガングロ、まつ毛のエクステバッタバタの、派手も派手!派手!おギャル様の登場でぃ!ってな娘が現れた。

 私は、友人に耳元でささやいた。

 「で、どういうこと?」

 「箱入(はこいり)さんところの娘さんや!」

 「箱入さんって、苗字かよ?!」

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過ち(2)

 彼は、頭を抱えていた。

 暗い部屋で、一人ポツンと机に向かい、新聞を広げたまま、その上に両肘をつき、目を閉じたまま、頭を抱えていた。

 「『正しく生きたい!』、ただそれだけなのに・・・・・・」

 彼は自分の愚かさにウンザリとしていた。

 「俺は、何てことをしてしまったんだ!『虫』を観察するために開発された『虫めがね』で、新聞の『文字』を読むだなんて!開発された本来の目的から、非常に逸脱しすぎた行為だ!私のような人間は、社会的に非難されてしかるべきなんだ!」

 彼は、自分自身に憤りを覚え、眠れぬ夜を覚悟していた。

 しかし、新聞を隅々まで読んだせいか、眠れぬどころか、爆睡だった。

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過ち(1)

 月の明かるい夜だった。

 彼は部屋の明かりを消したまま、窓辺に佇んでいた。塞ぎ込んだ表情を浮かべながら、時折ため息をつき、こうこうと差し込む月明かりに照らされていた。

 「何てことをしてしまったんだ・・・・・・」

 声にならない声を、ブツブツとつぶやきながら、ただひたすらに悔やんでいた。どんなに悔やんでも悔やんでも、自分のしでかしてしまった過ちの大きさに、押しつぶされてしまいそうだった。

 「『正しく生きよう!』、ただそれだけを心に決めて、今日まで生きてきたのに・・・・・・」

 自分という人間が、悔しくて悔しくてたまらなかった。

 「『ハエ叩き』で、ゴキブリを叩いてしまうなんて・・・・・・」

 ふと見上げたまあるいお月さんでは、うさぎが餅を突いていた。

 

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ノリオくん

 ほっかほかのつっやつやの真っ白な握り飯ちゃんの横で、味付け海苔のノリオくんは自分の出番は今か今かと待ち構えていた。

 そして、いざっ!ノリオくんの出番がやってきた!

 ノリオくんは、勢いよく真っ白な握り飯ちゃんに抱きついた!

 「キャー!エッチ!変態!」

 握り飯ちゃんたちは警察に通報!ノリオくんは、あえなく御用となってしまった。

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賢明な選択

 彼は、友人に電話をかけた。

 「あ、もしもし、俺々!」

 「お~、久しぶり!」

 「久しぶり~。今、電話いいかな?忙しい?」

 「あ、ごめん!今ちょっと忙しくってさ、後でかけ直していいかな?」

 「いいよいいよ。何だか周りがワイワイと賑やかそうだね」

 「そうなんだよ。残り時間が少なくってさ」

 「あ、そうなの」

 「今ね、このまえオープンした和菓子屋さんの和菓子バイキングに来てるんだぁ」

 「へぇ~、そんなのあるんだぁ」

 「で、俺、今、もなか食ってる最中なんだ」

 「あ、そうなんだ。あ、ごめんごめん!残り時間少ないんだよね。じゃ、またあとで!」

 漢字が苦手な上に調べるのが大嫌いな彼が、漢字大好き人間の友人に電話をかけたことは賢明な選択だった。

 『今、何してる?』

 なんてメールを打って、

 『最中食ってる最中』

 なんて返信された日にゃ、一日中、悩みっ放しに悩まなければならないところだった。

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地球温暖化現象(6)~動じない地球~

 ((*お時間ございましたら、『地球温暖化現象(1)(2)(3)(4)(5)』も、ご参照下さいませ。))

 隕石くんは、しばらく家に帰っていたが、ギンガーネットで地球くんの様子を検索していると、最近、また新たな症状が地球くんに出てきたということが分かり心配になり、地球くんを再び見舞うことにした。

 そしたら、案の定だった。周りの迷惑顧みず、車やバイク、自転車や歩行者もビュンビュン行きかう大きな道のまん真ん中で、立ち話に耽っているではないか!

 隕石くんは、地球くんに声を掛ける前に、先生に訊ねた。

 「先生!」

 「何だね?」

 「おそらく、先生にお伺いするまでもないとは思うのですが・・・・・・」

 「何だね?」

 「地球くんの、この症状って、その・・・・・・」

 「何だね?隕石くん、おそらく君の思っている通りだよ。言ってごらんなさい」

 「はい。彼のこの症状って、『地球、おばはん化?現象』ですか?」

 「正解!」

 隕石くんと先生は、立ち話に耽る地球くんたちに、軽くクラクションを鳴らそうかと思ったが、おばはん化した地球くんたちににらまれそうなので、そのまま引き返した。

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地球温暖化現象(5)~熟年期の地球~

 ((*お時間ございましたら、『地球温暖化現象(1)(2)(3)(4)』も、ご参照下さいませ。))

 すっかり気持ちよく酔っ払ってしまった地球くんは、その後、何回も何回もトイレに行き、オシッコを繰り返した。吐くような悪酔いはしていなかったので、地球くんは上機嫌だった。

 「せやけど地球くん、ようそんなけオシッコ出まんなぁ」

 誰もが感心して、地球くんがトイレから帰ってくると労いの言葉を掛けた。

 「ほんまやで。オシッコ、ジャージャー、出しチャイナ!・・・・・・なんちゃって!」

 地球くんは、体調が戻ったんじゃないだろうかと思うくらい、親父ギャグ炸裂で上機嫌だった。しかし、地球くん自身は、

 「せやけど、温暖化が進むと、あちこちに影響してもてなぁ~。ほんま、ぶっちゃけた話、身体のあちこち、わやや!で。ほんまに・・・・・・。アヤヤ、ちゃうで!」

 と、今もなお体調不良で深刻な状況であることに変わりがないと、みんなに伝えていた。

 「地球くんの、温暖化の症状が深刻なのはよく分かるけど、君、そうやってダジャレを交じえて言うから、ほんまなんか、冗談なんか分かれへんところあるで!」

 「そう?ヘタなシャレはやめなシャレ!ってか?」

 「ほら、また!そういうこと言うやろぉ。せやから、説得力がなくなんねん」

 地球くんのダジャレは絶好調だった。

 「地球くん、リラックスして、血の巡りがようなってんねんやったら、今日はぐっすり寝れるんちゃうか。そろそろ寝たら」

 みんなもそろそろ地球くんのダジャレに疲れ始めていたので、地球くんに、そろそろ眠りにつくよう促した。

 「いや、俺さ、そろそろ寝たいんやけど、寝れないんですわ」

 「何で?」

 みんなはキョトンとして、地球くんに注目した。そしたら、

 「ふとんが、ふっとんだから~~なんてねぇ~!ドッヒャー!!」

 地球くんは、一人で大盛り上がりだった。みんなは、もう呆れて、

 「地球くん、君、親父か?」

 と、口々に訊ね始めた。

 隕石くんは、心配になり、先生に訊ねた。

 「先生、地球くんの親父ギャグとか、ダジャレが止まらなくなってきましたけども、だいじょうぶでしょうか?」

 「これは、相当、『地球、おっさん化?現象』が進んできとるなぁ。いかんなぁ~」

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地球温暖化現象(4)~地球の循環機能~

 ((*お時間ございましたら、『地球温暖化現象(1)(2)(3)』も、ご参照下さいませ。))

 地球くんは、惑星や衛星、恒星など、たくさんの見舞い客のマッサージのおかげで、かなり緊張感もほぐれ、心身ともにリラックスしたような表情を浮かべていた。

 「あ~、何だか、ちょっと久しぶりに、軽く一杯飲みたくなってきたなぁ」

 地球くんがそうつぶやくと、隕石くんはちょうどお土産を持ってきてるよと、地球くんに差し出した。

 「いやぁ、体調の悪い地球くんに、お見舞いの品にお酒なんて持って来るのは、いかがなものかと悩みながらも、先が短いのなら、飲ませてあげようと持ってきたんだ」

 「おいおい、先が長いか短いかなんて、分かりませんがな。ま、ま、せやけど、ありがとう。せっかくやし、みんなで一杯づつ飲みましょうや」

 そうして、みんなで酒を酌み交わした。

 「いやぁ~、さすがに皆さんに充分なマッサージをしてもらったおかげで、血の巡りがごっついええのか、ものすごいお酒がよう回るわ。ほんま、これちょっと、自転のスピード半端やないわぁ。目回る、目回るわ」

 地球くんはそう言って、トイレに行こうと立ち上がるとよろめいた。

 「おいおい、地球くんだいじょうぶかぁ?」

 みんなは口々に地球くんに訊ね始めた。そして、地球くんがあまりによろめくもんだから、誰もが地球くんに、「酔っぱらってんの?」と聞いてしまう症状が出始めた。

 心配になって、隕石くんは先生に訊ねた。

 「先生、これも伝染病の一種ですか?」

 「そうだね。『地球、酔ったんか?現象』だね。いかんなぁ~」

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地球温暖化現象(3)~地球への提言~

 ((*お時間ございましたら、『地球温暖化現象(1)(2)』も、ご参照下さいませ。))

 隕石くんは、やはり地球くんの病状が気になり、地球くんを再び見舞うことにした。銀河系を網羅しつくしているギンガーネットで、地球くんに役立つ情報はないものかと、いろいろと検索し、いろんなサイトで調べてみたものの、なかなかコレ!という決め手はなかった。しかし、地球くんを心配する声は、日に日にギンガーネットを賑わしていることだけは確かだった。

 隕石くんが、地球くんのところへ到着すると、地球くんを心配するたくさんの惑星や衛星、恒星の皆さんが、彼を見舞っていたのだった。

 「こんにちは、地球くん」

 「お~、隕石くん!こないだ来てくれたとこやのに、心配して、また来てくれたんかいな。いやぁ~遠いとこからすまんなぁ!」

 「いやいや、そんな」

 「皆さん、心配して来てくれたはんねんがな」

 「そら、心配するよ~。地球くんかなり温暖化で苦しんでる~って、ギンガーネットでいっぱい書き込みあるもん」

 「そうみたいやなぁ。でもなぁ、どうしたらええもんやら・・・・・・。先生らにも分からんみたいやわ」

 そして、隕石くんが見舞い客に一つの提案をしてみた。

 「みなさん、どうでしょう。地球くんの疲れをほぐして、自然治癒力が高まるように、みんなでマッサージしてみませんか?」

 みんな賛成だった。これだけ大勢なら、地球くんに充分なマッサージをしてあげられると、交代交代にマッサージを施した。

 あまりに大勢で、それぞれ顔を覚えていないため、途中から誰が既にマッサージをして、誰がまだマッサージをしていないのかが分からなくなってしまうような事態が頻発し始めた。そして、みんな口々に、

 「君、地球くん、マッサージしたったか?」

 と、聞き始めてしまうという症状の、『地球、揉んだんか?現象』が発生してしまった。

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地球温暖化現象(2)~地球の悲鳴~

 ((*お時間ございましたら、『地球温暖化現象(1)』も、ご参照下さいませ。))

 地球くんとの再会を終え、家に帰った隕石くんは、温暖化で体調を崩している地球くんのことが心配だった。

 「地球くん、だいじょうぶかなぁ?治るのかな?」

 そんな心配を毎日していると、隕石くんは、ちょくちょく地球くんの顔が頭によぎり、

 「お~い、隕石くん!助けてくれ~!」

 と、地球くんが呼んでいるんじゃないだろうかと思うようになり、近いうちにまたお見舞いに行こうと思っていた。

 日が経つにつれ、隕石くんの心配も、だんだんエスカレートしてきて、

 「お~い、隕石くん!助けてくれ~!」

 と、地球くんの顔が頭によぎっていただけのものが、地球くんの声が今呼んでいるかのように、耳鳴りするようになってしまった。これはいかんと、隕石くんは、地球くんを見舞いに行く前に、自分も病院で診てもらうことにした。

 「先生、どうでしょう?」

 「そうだねぇ、心労だねぇ」

 「新郎・新婦の、新郎ですか?」

 「これまた、ベタだね~、隕石くん」

 「すいません!」

 「心配する気持ちはよ~く分かるけれども、心配しすぎはよくないなぁ。冷たいこと言うようだけど、君が心配しすぎてもどうにもならないんだから。地球くんが今呼んでいるかのように、地球くんの声が耳鳴りするまで心配しちゃあなぁ、君の身体に毒だなぁ。いかんなぁ」

 「そうですねぇ。で、先生、私の症状はどういう・・・・・・?」

 「君のは典型的な『地球、呼んだんか?現象』だなぁ」

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地球温暖化現象(1)~現在の地球~

 仕事の上で、引責辞任を強いられた隕石くん。突然お暇ができたので、久々に地球くんに会いに行くことにした。

 「せっかくだし、突然行って、ひざカックンして驚かしてやろう!」

 隕石くんは、そんなことを考えて旅に出た。

 「何年ぶりかなぁ。とにかく、久しぶりぶりだから、きっとびっくりするだろうなぁ」

 しかし、隕石くんは、行けども行けども、なかなか地球くんを見つけることができず困り始めていた。

 「あれ~、おかしいなぁ・・・・・・。そろそろ見つかるはずなのに、地球くんの姿が見当たらないなぁ。道間違えたのかな?」

 隕石くんは少々不安になりかけていたものの、記憶を頼りに、通りがかりの方々にいろいろ聞きながら、地球くんを探し回った。

 そして、ついに見つけた!幸い、隕石くんは地球くんの後ろ側に回り込めたので、予定通りひざカックンをお見舞いしてやることができた。

 「ぎゃっ!びっくりした~!」

 「オッス!地球くん!久しぶりぶり~!」

 「お~!誰かと思えば隕石くんやないか!もう、びっくりさせんといてくれや~。足腰弱っとんのに。せやけど、君、変わっとらんなぁ!」

 「そう?」

 「君、変わってへんがな~。この年齢なって、わざわざひざカックンするために後ろ側回り込む奴、君ぐらいやぞ!」

 「ハッハッハッ!なるほど」

 隕石くんと地球くんはどうにか再会することができた。そして、隕石くんが地球くんに訊ねてみた。

 「地球くん、君、昔はアイドル並みに輝いて、もっと青々してたから、探しやすかったけど、探しにくくなったねぇ」

 「そやろ。よう見つけてくれたなぁ」

 「通りがかりに道を聞きながら、最後、月でバニーガールのカッコしたうさぎの餅屋さんに聞いて、どうにか探し出せたよ」

 「あ~そうかいな。そら、すまんかったねぇ」

 「だけど、地球くん、だいじょうぶなの?体調悪そうだけど・・・・・・」

 「そやねん。先生に診てもろたら、『君、温暖化だいぶ進んどんなぁ』って言われてなぁ、体調悪いねん」

 「そうなんだぁ」

 「で、最近訪ねて来てくれはる方々皆さんが、どうやら僕を見つけにくいみたいで、僕を見つけたときに決まって、『地球くん、こんなとこにおったんか!』って言わはるんです、って先生に聞いたんや」

 「そしたら?」

 「そしたら、『地球おったんか現象が相当進んどる!』って言われてもたわ」

 

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レトルトくん

 そこの家では、常温で保存できる食品類は、風通しのよい、直射日光の当たらないところに保存されていた。

 冬の寒い日。わりと長い期間、食べられずにいたので、すっかり仲良しになっていたレトルトパックのカレーくんとハヤシさんは世間話に花を咲かせていた。

 「せやけど、ハヤッさん、今日はまた、よう冷えますなぁ」

 「ほんまやねぇ」

 どちらも今年製造された、同い年生まれだったが、ハヤシさんの方が、早生まれだったので、学年が一年上ということもあり、カレーくんはハヤシさんに敬語を使っていた。

 「せやけど、ハヤッさん、こんな寒い日ぐらい、ちょっと湯に浸かりたいでんなぁ」

 「ほんまやねぇ」

 そんなことを話していると、ここの家の夫婦が帰ってきた。

 「お父さん、お昼はレトルトでいいですか?」

 「あぁ、何でもええよ!」

 「ちょうど、カレーとハヤシがあるんやけど、どっちしはります?」

 「ほんなら、ハヤシもらおか」

 「ほんまに、お父さんは、ハヤシの方が好きやねぇ。どっちする?って、いつ聞いたかて、ハヤシやもんねぇ。そう言うたら、初恋の人もハヤシさんだったとか言ってましたねぇ」

 「オイオイ、そんな昔の話で、囃し立てるなや~」

 「お父さんも、そんなオッサンギャグを言う年齢に、なったんやねぇ~」

 「そんな風に言うて欲しそうに、誘導しとんのん、あんたやないか!」

 夫婦はそんなたわいもない話をしながら、手を洗い、うがいをし、昼食を食べる準備をし始めた。

 奥さんは少しでも早く出来上がるように、湯沸かし器から熱いお湯をお鍋に入れて、さらに湯を沸かし始めた。そして、カレーくんとハヤシさんを持ち上げて、ササッと二つとも箱を開けた。

 「うわっ!このおばはん!何しやがんねん!服脱がしやがる!ハヤッさん、大丈夫でっか?!」

 「カレーくん!わしもあかんわ!」

 奥さんには聞こえない声で、カレーくんとハヤシさんはもがいていた。

 奥さんは、レトルトパックを二つとも、沸かし続けているお湯につけた。

 すると、水ではなく、あるていど、熱いお湯だったので、カレーくんとハヤシさんは、

 「熱い!熱い!熱いけど、ええあんばいやぁ~。ハヤッさん、どないでっか?」

 「いや~、お湯に浸かるて、ええもんやねぇ~。何かこう、ホッとするっちゅうかな、そんな感じやねぇ」

 しばらくの間、カレーくんとハヤシさんが、のんびりお湯に浸かっていると、ドアベルが鳴り、奥さんは「はい、はい~」と、その場を離れた。そこへ、入れ違いに主人がやって来た。すると、ほどなく、ハヤシさんが頭から持ち上げられた。

 「あっ!おっさん!何しやがんねん!気持ちよ~に湯に浸かっとんのに!あっ!ハヤッさん!!」

 カレーくんは必死に叫んだ!

 「カレーくん!タ、タ、助けてー!あーっ!」

 ハヤシさんも必死に叫んだ!

 「ハッ!ハヤッさーーーん!」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 カレーくんの見た光景は、あまりにも凄惨な光景だった。ハヤシさんは、頭を引きちぎられ、逆さまにされて、全身を絞るように、内臓を全部出されてしまった。

 するとそのとき、玄関の方から奥さんが大きい封筒を持ってきた。

 「お父さん、解剖学会から速達で何か着てますよ」

 「はいよ!」

 この主人は、解剖学者らしい・・・・・・。

 

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お昼

 そこの会社は、ワンマン社長のワンマン経営の会社だった。社長の言うことは絶対で、社長の一言ですべてが決まると言っても過言ではなかった。

 お昼ごはんにしてもそう。社長の「お昼にしようか」の一言がなければ、お昼ごはんにも行けなかった。いつも、その一言が出た瞬間、みんな「お昼行ってきま~す!」と、それぞれに食堂やレストランなどに出掛けてお昼タイムを迎えていた。

 しかし、今日は朝から社長はものすごくご機嫌が悪かった。

 「もう、まったく!おまえたち、何をやってるんだ!バカヤロー!今日は全員!昼、なしだぁー!分かったなぁ!!」

 最悪の展開だった。とてもじゃないが、晩まで何も食べずになんて無理だ。

 みんなは空腹に耐えながら、社長を怒らせないためにも、仕事に集中した。そして、あと一時間。何とか夕方まで、みんながんばってきた。

 そこへ、電話が鳴り、社員の一人が、電話を取った。

 「お電話ありがとうございます。○○商事でございます。・・・・・・はい、いつもお世話になっております。・・・・・・あっ、はい、私が△△でございます。あっ、こんにちは~!・・・・・・」

 彼は、何の変哲もない、一般的な電話応対をしていた。誰も何も疑う余地もなかった。しかし、社長はそこへカンシャクを起こしたのだった。

 「おいっ! △△!電話を切れ!電話を!」

 「はっ?はい?!」

 社員は、相手先に、後ほど電話をかけ直す旨を伝え、一旦電話を切ることにした。そして、社長のところへ駆け寄った。

 「社長、どうされましたでしょうか?」

 「どうされましたも、こうされましたもないだろう!」

 「はっ、はい?」

 「貴様、電話の相手に今なんて言ったんだ!」

 「え、ええぇっと・・・・・・」

 社員はキョトンだった。周りの社員もキョトンだった。社長が何を怒っているのか分からず、その行く末を見守っていた。すると、社長は再び怒鳴り散らし始めた!

 「貴様!今、『こんにちは』って言っただろう!」

 「はい!申しました!」

 「『こんにちは』ってのは、昼に使う挨拶言葉だろうが!」

 「はい!」

 「俺はさっき、『今日は全員!昼、なしだぁー!』って言っただろう!」

 「はい!」

 「って、ことは『昼』がないんだよ!バカヤロー!」

 社長のその一言で、世間が夕方であろうと、社員たちは全員、電話の応対、来客の応対には、「おはようございます!」と言い始めた。

  

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気分転換

 「何度言ったら分かるんだ!このバカ野郎!」

 もう、部長の怒りは最大限に達していた。ここまで怒られると、さすがにへこんでしまう。この調子で、長々と説教されると、ほんとに苦しい・・・・・・。

 「下ばっかり見てないで!俺の顔を見たらどうだ!このバカ野郎!」

 「はい!すいません!」

 これ以上怒らせて、血圧上がりすぎで倒れられても困るし、僕は部長の顔を見た。

 部長の鼻から、長~い鼻毛が、ピロ~ンと出ていた。

 僕は、怒られてることより、笑いをこらえることに苦しくなった。

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モーニングサービス

 「いらっしゃいませ!」

 「モーニングサービスお願いします」

 「ありがとうございます!」 

 店員さんは、何やらアンケート用紙みたいなものをお盆の上に置き、メモする準備をし始めた。

 「当店では、他のお店では味わえないモーニングサービスとなっております」

 「はぁ・・・・・・」

 「それで、お客様にお伺いしたいのですが、『モーニング』と申しますと、お客様はどのようなイメージをお持ちでいらっしゃいますでしょうか?」

 「そうですねぇ~。ん~~、僕たちの年代だと、若い頃ヒットした、サビの部分が「・・・・・・モーニン、モーニング、きみの朝だよ、モーニン、モーニング、きみの朝だよ~・・・・・・」っていう岸田敏志の『きみの朝』って曲かな」

 「なるほど・・・・・・」

 「それから、チャゲ&飛鳥の『モーニングムーン』って曲かな」

 「他に、何かございましたら、お願いいたします」

 「そうですね。じゃあ、月並みですけど、やっぱり『モーニング娘』かなぁ」

 「やっぱり、そうですよね」

 「あ、それから、葬式の喪主さんが着る、モーニング・・・・・・なんてね。ハハハハハ」

 「ハハハハハ」

 軽い冗談に、彼女も笑ってくれた。実に愛想のいい女の子だ。当然、また来よう。男はこういうのに弱い・・・・・・。

 「ありがとうございました」

 彼女は僕に丁寧に一礼して厨房へ入って行った。

 しばらくすると、どこかの葬式から抜け出して来たようなモーニングを着た喪主さんが、マイクを持って司会進行し始めた。

 「大変長らくお待たせいたしました。本日、お客様ご希望のモーニングサービス、準備が相整いましてございます。それでは、ハリキッテ、どうぞ!」

 すると、モーニング娘、岸田敏志、チャゲ&飛鳥のライブが繰り広げられた。

 贅沢なライブが一通り終わると、店員さんが笑顔で請求書を持ってきた。明細には、葬式代、モーニング娘・岸田敏志・チャゲ&飛鳥ギャラ、後は機材の搬入費、云々かんぬん細か~~い字で書いてあった。

 さて、支払いは、どうするかなぁ・・・・・。

 贅沢なライブより、トーストとゆでたまごを食べて、ホットコーヒーを飲んで、目の前の空腹を満たしたかったなぁ~・・・・・・。

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色眼鏡

 彼はかなり酔っていた。今日は相当腹が立ったらしく、やけ酒もやけ酒。家に着いてもボヤキ通しに、ボヤキ通しだった。

 「ちょっと、あなた、しっかりしてよ!もう、こんなに飲んじゃって!」

 彼は女房に抱えられながら、ダイニングのソファーに腰を下ろした。

 「ほんま腹立って!腹立って!しゃ~ないんじゃ!今日は!」

 「シー!!もう、何時だと思ってんのよ!ご近所にご迷惑でしょ!」

 女房はそう言うと、彼にコップ一杯の水を差し出した。するとそのとき、あまりの騒がし