前、右、左、・・・・・・
『前に倣(なら)え!』
『右に倣え!』
『左に倣え!』
『○○に倣え!』
ばかりしていると、
自分がなくなる。
このまえ、電車に乗った瞬間、友達の横顔を見つけて、何の躊躇もなく、「あ、久しぶり!」と、声を掛けて肩を叩いた。
思いっきり人違いだった!
思いっきり恥ずかしかった!
顔から火が出るとはこういうことなんだろう!
どうしようもない時間て、ほんとに長い。
ま、愛想のいい人で、助かった。
彼女の心は冷えきっていた。
「お嬢さん、私があなたの心を温めてあげますよ」
「えっ!ほんとに!ありがとう!やさしいんだね、ドライヤーくん!」
ドライヤーくんは、親切・丁寧に、思いやりを込めて、最高のおもてなしの心で、彼女のその冷えきった心を温めた。
幸か不幸か、彼女の心は、カラッカラに乾いてしまった。
イスの中でも、特に自転車のサドルというのは、お尻に埋もれてしまう感のあるイスである。
もし、あなたがサドルだったとして、顔面を上向きにしているところへ座ってこられて、窒息死してしまうかもしれない運命だったとしたら、どのようなお尻であれば、万が一、窒息死したとしても、この世に未練は残らないと思うだろうか?
「はい、もしもし・・・・・・、あ、久しぶり~~!元気~~!・・・・・・えっ?あ、そう!みんなもいるんだぁ」
日曜の昼下がり、新妻の携帯電話が鳴った。どうやら、友達かららしい。
「うんうん・・・・・・、えっ?!あっ、今、近くに来てるの~。うんうん・・・・・・、あっ、そこまで来てるんだったら、左手にタバコ屋さん見えるでしょ?・・・・・・うん、そうそう。そこの角をね、左に曲がってくれたら、マンションが見えるでしょ?・・・・・・そうそう、そのマンション。・・・・・・、えっ?何?あ、お菓子買って来るって?あ、そんなの気にしなくていいのよ、手ぶらで来てくれたら。・・・・・・そうそう、新居のお知らせ送ったときにさぁ、『お近くにお越しの際は、どうぞお気遣いなく、手ぶらで来てくださいね!』って書いてたでしょ。だから、気遣わないで~。もうほとんど到着してるんだし」
新妻は電話を切ると、
「突然ごめんね~、友達がさぁ、もうそこまで来てるのよね。ね、いいでしょ?」
と、私に両手を合わせて謝りながらそう言うので、
「もちろん!もちろん!どうせ今日は何の予定もなくて暇なんだし。それに、部屋も掃除したところできれいだし、ちょうどいいじゃない。僕もまだ会ってない君の友達に挨拶しておきたいし」
と、私は快く了解した。
「手ぶらで来るって言うから、悪いんだけど、あなたが食べるの楽しみにしていた昨日買っておいたケーキだけど、出してもいいかな?」
「もちろん!もちろん!」
すると、ほどなく、ピンポーン!っと鳴った。
「どうぞ~。鍵開いてるから~、入ってきて~」
インターホンで妻がそう答えると、玄関ドアが開き、妻の友達たちが上半身裸でノーブラ、ブラジャーの代わりに両手でお乳を隠しながら、
「おじゃましま~す!『手ブラ』ですいませ~ん!」
と、元気よく、ぞくぞくと我が家に入ってきた。
手ブラですいませんだなんて、そんなこと言わないで、毎日『手ブラ』で来て下さいって感じだぜ!
一通り挨拶を済ますと、
「じゃ、僕、コーヒー入れるわ。みなさん、ミルクと砂糖は一つずつでいいですか?」
「は~~い!」
妻の友達たちから元気な返事が返ってきた。そして、その中の一人から、リクエストがあった。
「ご主人、すいません」
「何でしょう?」
「すいませんが、コーヒーにミルクと砂糖一つずつ入れてもらって、かき回してもらえますか?」
「はい、もちろん!」
「それで、私たちにコーヒーを飲ませて頂いて、ケーキも食べさせてもらえますか?」
「もちろんいいですけど、どうされましたか?」
「何分、私たち、『手ブラ』なもので、手が離せないくらい忙しいんですぅ~~」
私としては、手を離して欲しいのだが・・・・・・。
「明日、何持って行ったらいいかなぁ?」
「そうねぇ、特にこれといって持って行くようなものってないと思うよ」
「手ぶらで行くのもちょっとねぇ」
「不安だったら、まぁ、ハンドバック一つぐらい持って行っとけばいいんじゃない。ま、それぐらいだったら、荷物にもならないし、邪魔にもならないしさ」
私はそのように伝えてその日は帰宅した。
そして翌朝、待ち合わせ場所に行くと、向こうの方から何かを引きずってくる彼女を見つけた。
「遅くなってごめんなさいね。これ、ほんと重たくって重たくって。一つぐらいだったら荷物にもならないし、邪魔にもならないって、あなた言ってたから持ってきたけど、これ一つだけでも、けっこう荷物にもなるし、邪魔にもなるみたいよ」
彼女は、何を聞き間違えたのか、サンドバックを一つ引きずってきた。
絵を描くのが好きだと、色もきれいに塗りたくなったりする。
描かれた絵に塗られた色、服の色、車の色、家具の色、食器の色・・・・・・などなど、具体的に何かに塗られた色を眺めるだけではなくて、カラーサンプルのようなものを眺めているだけでもいいから、いろいろ色を眺めているのが好きな場合もある。
例えば、子供が無邪気に「色塗りが好きだ」と言いたいところ、言葉足らずに「色好きやねん」とか言えばかわいかったりするし、言われた方も額面どおりに理解する。
ところが、大人になってから、無邪気に言葉足らずに「『色』好きやねん」って言ってみても、『違う方のこと』が好きなのかなと思われてしまったりする。
「私は単純に『色』が好きです」
と、私が言えば、読者の皆さんはどちらの意味にとるのだろうか?
近代科学の進歩した、この平成の世の中に、プチ狂言マニアの店主が営む「ござる屋」と言う小さな店に、プチ時代劇マニアのお客人が参ったようでござる。
「おじゃまするでござる」
「よう来られたでござる」
「そのような温かきお出迎え、誠にありがたき幸せにござる」
「お客人、おぬし、なかなかの時代劇好きのようでござると、お見受けしたでござる」
「はてさて、もう見抜かれたでござるか?」
「なになに、同じようなニオイがするでござる」
「さようでござるか」
「して、今日はどのようなご用件でござる?」
「いやいや、『ござる屋』と言うユニークな屋号が目に入ったでござるゆえ、ちょっと立ち寄らせてもらっただけでござる」
「さようでござるか。ごゆるりして参られると、よろしいでござる」
「何となく、無理のある言い回しのようでござるが?」
「ま、ま、気にしないで頂きとうござる」
「分かり申したでござる」
「礼を言うでござる」
「して、ご亭主、これは何でござる?」
「茣蓙(ござ)でござる」
「いろいろな種類があるでござるな」
「さようでござる」
「して、ご亭主、これは何でござる?」
「笊(ざる)でござる」
「ほほう、こちらもいろいろな種類があるでござるな」
「お褒めにあずかり、ありがたき幸せにござる」
「して、ご亭主、他に何かござるか?」
「申し訳ないでござるが、当店は茣蓙(ござ)と笊(ざる)のみ販売している店でござる」
「さようでござるか?!」
「さようでござる」
「それで屋号が『ござる屋』でござるか?」
「さようでござる」
「では、ご亭主、特に『ござる言葉』を使う慣わしになっているというわけではないのでござるか?」
「さようでござる」
「さようでござるかぁ~。しかし、『ござる屋』とは随分と、時代劇をニオわせるネーミングでござるな」
「いやいや、お客人、何分、平成の世でござる。何でもかんでも、縮めて言うのが好きな人がたいへん多ござるゆえ、『ござ』と『ざる』を縮めただけでござる」
「ほほう、意外にも、根っこの発想は、今風(いまふう)でござるな」
「さようでござる」
チラシの裏紙や、いらなくなった資料の裏紙などを、よくメモにしたりする。
チラシや資料としては、もういらない紙なので、その用途としてはもう値打ちは下がっているのだけれど、その裏紙にかなり重要なことをメモした瞬間、その紙の値打ちがたちまち浮上する。
大事な電話番号を書いた紙をなくさずにいるかいないかで、結婚まで行ってしまう人・行かない人、大商いになる人・ならない人、あるいは、生きるか・死ぬかの運命をも左右することだってあるだろう。
たかが、メモ、されど、メモ。
「マウスの左側のボタンを、人差し指で一回押すことを、『クリック』と言います。みなさん、ここまでは、いいですかぁ~?」
「は~い!」
「そして同じく、マウスの左側のボタンを、人差し指で二回押すことを、『ダブルクリック』と言います。みなさん、ここまでも、いいですかぁ~?」
「は~い!」
「ややこしかったら、一回マウス、二回マウス、みたいな感じで覚えてもらってもいいと思いますよ」
「は~い!」
なぜかアメリカかぶれの生徒たちは、ノートに、『マウス、Two マウス』と書いていた。
彼らは、人命救助の非常事態のときに、なぜかマウスを『クリック、ダブルクリック』しそうだ。
「なぁ、ちょっと頼むわ。ほんまに、ちょっとだけでええから、誤魔化して~な~。ほんま、頼むわ。ちょっとぐらい誤魔化してくれてもダイジョウブやろ」
私は、必死に頼み込んだ。
すると、胡麻貸してくれた。
お金を入れておく財布。『財(ざい)』を入れておく『布(ぬの)』と書く。
昔は布製が多かったのかもしれない。
今のところ、私の『財』を入れているのは『革(かわ)』だったりする。
じゃあ、私の場合、お金を入れているのは『財革』か?
何だか、『財政改革』みたいだなぁ。
彼は、友人たちと山登りに来ていた。
ちょうどお昼ごろ、お弁当を食べるのにちょうどいい場所に着いたので、そこでお弁当を食べることにした。
彼らは、ワイワイガヤガヤと、賑やかにお弁当を食べていた。そして、のどを潤そうと、水筒に手を伸ばしたときだった!
彼は突然、頭を抱え、落ち込み始めた。
「どうしたの?!具合でも悪いの?頭痛いの?」
誰もが心配して彼に声を掛けた。
「『正しく生きたい』、ただそれだけなのに・・・・・・」
彼は涙ぐんでいた。
「『水筒』って、『水』の『筒』なのに、水以外のお茶を入れてしまうなんて・・・・・・」
彼は自らの過ちに、とめどなく泣き崩れていた。
「あ、これ、お茶入ってんねんて!おまえ飲めへんねんやったら、俺らもらうわ。お茶いる人、は~~い!」
親切な彼の友人たちは、全員手を挙げて、彼の代わりに彼の水筒のお茶を全部飲み干した。自分たちの水筒のお茶を減らすことなく・・・・・・。
今や、お年寄りの方でも、普通にCDとおっしゃるようになった。
キッチリと言えば、『コンパクトディスク』なんだろうが、まぁ、一般的にCDショップにCDを買いに行くのに、「コンパクトディスクショップに、誰それのコンパクトディスクを買いに行ってきます」と、かなりキッチリと言う人は少ないだろう。
このまえ、CDショップに行ったとき、おじいさんが何やらCDを探していたらしく、店員さんにその場所を聞いていた。
「あ、兄ちゃん、すんまんせん!」
「はい、いらっしゃいませ!」
「演歌のコンパクトディスコ探してんねんけど、どこかいなぁ?」
「はい、あちらでございまして、ご案内いたします」
おじいさんは、店員さんのあとについて行った。
『演歌のCD』と言って下されば、私の耳には残らなかったが、『演歌のコンパクトディスコ』と来た!そして、おじいさんは、「ご案内いたします」と、店員さんにご案内されて行ったのだ!
もしかしたら、店員さんとおじいさんのあとについて行けば、『演歌』が思いっきりかかっている『コンパクトな(小さな)ディスコ』に辿り着くんじゃないだろうか?!と、一瞬ワクワクしてしまった。また、どんな人たちがノリノリに踊っているのか興味津々に見てみたい気がした。
しかし、本当に、『演歌』が思いっきりかかっている『コンパクトな(小さな)ディスコ』があったなら、果たしてそこで、人々はフィーバーできるのだろうか?踊れる広さはあるのだろうか?
キッチリ言おうとされていた、あのおじいさんは、きっと几帳面な方なのだろう。
ま、でも、『コンパクトディスコ』とおっしゃったので、まだ若いおじいさんなんじゃないだろうか?『コンパクトデスコ』とおっしゃれば、さらにお年を召したおじいさんな感じがしていただろう。
『演歌』の『コンタクトディスコ』とか『コンタクトデスコ』とかおっしゃってたら、もうわけが分からなくなってくるが、おそらく、『演歌』のかかっている眼鏡禁止のコンタクトレンズ着用者専用のディスコに案内されたかもしれない。
あるいは、『演歌』の『コンパクトデスク』とか『コンタクトデスク』と、おっしゃってたら、もしかしたら、『演歌』のかかっている家具屋さんに案内されたかもしれない。
電車の切符売り場で順番を待っていた。私の前、右前、左前には、そら、もう、賑やかにしゃべって、しゃべって、しゃべり倒しているおばちゃんたちの集団がいた。
「ほんまに、よぉ~しゃべるなぁ~~~」って、呆れながら並んでいたら、案の定、私のすぐ前のおばちゃんがお札を入れて、ボタン押して、お釣りだけ取って、切符取るのん忘れて行った。
「あっ!おばちゃん!切符忘れてんで!」って、声を掛けようとした瞬間に、そのおばちゃんが、「あっ!」と、自分で気づかれた。
「危ない危ない、しゃべってたら、切符忘れて、鉄道会社に寄付してしまうとこやったぁ。ハッハッハ~」
と、周りの私たちに聞こえるように、少々恥かしげにブツブツ言いながら、戻って来た。
そして、私の顔を見て、「兄ちゃんも言うてくれたらええのに!」と言って、「ねぇ~」って他の人に同意を求めて、去って行った。
「何で俺が怒られなあかんねん!」って思いながら、あのおばちゃんも、切符取るのは忘れても、お釣りはしっかり忘れへんなぁと、何だか笑けてきた。
「ちょっと!ちょっと!あんたたち!何もめてるの~?!」
「あ、木村のおばちゃん!こんにちは!」
「はい、れいちゃん、こんにちは!で、どうしたの?」
「だってね、武士(たけし)くんが、ケーキ食べないって言うんだもん!」
「あら、おいしそうなケーキじゃない!」
「おばちゃん、これ、私作ったの!」
「へー!れいちゃんが作ったの!上手だね~!」
「武士(たけし)!あんた、食べないの?」
「武士(ぶし)は食わねど高楊枝!」
「おばちゃん、武士(たけし)くん、さっきから、こればっかり言うのー!」
「へぇ~、そうなんだ。で、今まで何やってたの?」
「チャンバラごっこ」
「あ、れいちゃん、それでだわ」
「え、何が?」
「今、きっとねぇ、武士(ぶし)になりきってるのよ。うちのキムタケは」
「え、そうなの~。チャンバラごっこをね、ちょっと休憩してね、ケーキ食べよって、私言ったんだよ~」
「れいちゃん、ほんとにごめんねぇ~。この子ねぇ、なりきったら、ほんと、とことんなりきっちゃうからね。ほんとバカだよねぇ~」
「男の子って、おもしろいね、おばちゃん!」
「そうでしょ。武士(たけし)!あんた、ほんとにケーキ食べないのね?せっかく、れいちゃんが作ってくれたのに!」
「武士(ぶし)は食わねど高楊枝。ましてや、西洋ものの菓子など、口にできませぬ」
「まったく何言ってんだろうねぇ、このバカ息子は!鎖国じゃあるまいし。れいちゃんがせっかく作ってくれたって言うのにさ!時代劇俳優さんだってね、ケーキ大好きな人いっぱいいるんだよ!このバカ!」
「じゃあ、おばちゃん、一緒に食べよ!」
「え、おばちゃん食べていいの?」
「いいの、いいの!」
「そうだね、武士(たけし)の言い分があんな調子だもんね」
「そうだよ」
「じゃ、武士(たけし)の言い分を尊重して、私たちが西洋ものの菓子を口にするとしますか!」
「はい、これ、おばちゃんの」
「はい、ありがとう!じゃあ、いただきま~す!」
「いただきま~す!」
「おいしいね~!れいちゃん、ほんとに上手だね~!」
「え、ほんと!よかった!」
「あんた、大きくなったらケーキ屋さんだね!」
「そんな~、おばちゃん、褒めすぎだよ~」
「拙者にも、一口だけ残しておいてはくれませぬか?後ほど、毒味を・・・・・・」
「なりませぬ!こんなおいしいものを毒味などと、無礼千万!れい殿、それでよろしゅうございまするな?」
「よろしゅうございます」
「して、武士(たけし)の言い分は、却下つかまつりまする」
「味見を・・・・・・」
「なりませぬ」
「ほんのちょっと・・・・・・」
「なりませぬ」
「ほんの・・・・・・」
「なりませぬ」
「ほ・・・・・・」
「なりませぬ」
ここ数年、私は、パッ!と、デジタル時計の表示を見たときに、12時34分だと、「おっ!1,2,3,4や!」とうれしくなったり、3時21分だと、「スリー、トゥー、ワン!ドーン!」みたいで、何だかうれしくなってしまう。
読者の皆さんは、そういうのってないですか?費用のあまりかからない幸福感!
「あなたを思う」・・・・・・、
なんて書くと、何やら恋愛感情を抱いている相手のことを思っているような光景を思い浮かべてしまう。
やはりそれは、自分が今まで生きてきた中で、直接恋心を抱いた相手に、純粋に抱いた感情を表現したときに、そういう表現になったということもあるだろうし、ラブソングの中によく出てくる歌詞の影響を受けていたり、恋愛ドラマや映画の中で出てくるセリフが知らず知らずに刷り込まれているからだろうと思う。
でも、よくよく考えてみると、ただ「思う」としか言っていなかったりする。
「私はあなたのことを好きだと思う」
「私はあなたのことを嫌いだと思う」
「私はあなたのことをスケベな奴だと思う」
「私はあなたのことをいやらしい奴だと思う」
「私はあなたのことをおもしろい奴だと思う」
などなど、例を挙げ出したらキリがないが、「あなたを思う」を具体化すれば、いろんなバリエーションが生まれる。
「あなたを思う」・・・・・・。あなたをどのように思おうと、「あなたを思う」には違いない。
「私はあなたのことをいい人だと思う」
誰かからそう思われるのは、人としてうれしい限りではあるが、シチュエーションによっては、交際を断る便利な言葉であったりする。
女友達の多い友人が、このまえ、「女の子紹介してやろうか?」なんて聞いてきた。彼の彼女の友達を紹介してくれるらしい。何でも、箱入り娘らしく、話題が弾むのか少々心配ではあったが、会ってみることにした。
約束の場所に行くと、友達とその彼女が待ってくれていた。
「お待たせ~」
「いやいや、まだ時間早いから」
彼のあとに続いて、彼女も挨拶してくれた。
「こんにちは。お久ぶりです。今、電話があって、もうすぐ来ますから」
僕たち三人はたわいもない話をしながら、その箱入り娘を待った。すると、ほどなく、
「ちぃ~~っす!!お待た、お待たの、お股おっぴろげ~~!!ちぃ~~っす!!」
思い描いていた箱入り娘とはほど遠い、キンキン金髪枯れまくりの、ガンガンガングロ、まつ毛のエクステバッタバタの、派手も派手!派手!おギャル様の登場でぃ!ってな娘が現れた。
私は、友人に耳元でささやいた。
「で、どういうこと?」
「箱入(はこいり)さんところの娘さんや!」
「箱入さんって、苗字かよ?!」
エレベーターの前に立った瞬間!エレベーターが、ほんとにタッチの差で!自分のいる階から!ほんとに!たった今!移動して行った瞬間!
「あっ!!あぁーーっっ!!」
と、残念な声を出しそうになりながら、エレベーターの移動状況を知る数字盤を、目で追いかける。
頭の中では、五木ひろしさんのあの名曲のサビの部分が、「・・・・・・行って行ってし~まった~・・・・・・」と流れ出す。
「・・・・・・もう、帰らない~・・・・・・」と、流れそうになったとき、自分の階にエレベーターが向かってくる兆しを見せたりする。
すると、たちまち、頭の中では、松村和子さんのあの名曲のサビ部分が、「・・・・・・帰ってこ~~~~いよ~~~~・・・・・・」と、三味線の音色と共に流れ出す。
こんな状況でも、やはり、年代別に流れる曲は違うのでしょうねぇ~。
強烈に寒い日、私たちは、暖かい店や部屋、車の中などにいると、外へ出るのに躊躇することがある。
また逆に、強烈に暑い日、私たちは、よく冷えて快適な店や部屋、車の中などにいると、外へ出るのに躊躇することがある。
わずかその扉や戸、ドア一枚、ガラス一枚向こう側の世界なだけなのに、飛び出すのには、大変な勇気を必要とするときがある。
あるいは、壁をぶち破って外へ出るというのは、もっと困難なこと。やっとの思いで出てみたけれど、厳しい世界が広がっていて、全然歯が立たなかったりする。
何か一枚向こう側。そのわずか一枚向こう側という世界に、人は情熱を駆り立てられたりする。
それが何なのか?
人それぞれであっていい。
彼は、頭を抱えていた。
暗い部屋で、一人ポツンと机に向かい、新聞を広げたまま、その上に両肘をつき、目を閉じたまま、頭を抱えていた。
「『正しく生きたい!』、ただそれだけなのに・・・・・・」
彼は自分の愚かさにウンザリとしていた。
「俺は、何てことをしてしまったんだ!『虫』を観察するために開発された『虫めがね』で、新聞の『文字』を読むだなんて!開発された本来の目的から、非常に逸脱しすぎた行為だ!私のような人間は、社会的に非難されてしかるべきなんだ!」
彼は、自分自身に憤りを覚え、眠れぬ夜を覚悟していた。
しかし、新聞を隅々まで読んだせいか、眠れぬどころか、爆睡だった。
神社のことを日常的によく『お宮さん』と言うことがある。『○○神社』、『○○大社』、『○○神宮』など、正式にはいろんな名称があるだろうが、地元の人にすれば、大概は『お宮さん』なのである。
その『お宮さん』に、たくさんの人々が、お正月には初詣、赤ちゃんが生まれたときにはお宮参り、子供の成長とともに七五三、などでお参りしたりする。あるいは、企業やプロスポーツ選手など、団体参拝というのもよくある光景である。
しかし、『こ宮さん(子宮さん)』には、家族そろってとか、たくさんのお友達と一緒にとか、企業やプロスポーツ選手などの団体参拝はできなかったりする。
一般的には『一人の息子さん』ではなく、『一本の息子さん』だけがお参りされるようである。
もちろん、特殊なケースでは『複数本の息子さん』がお参りされる『団体参拝』もあるのかもしれないが、ま、それは、世の中に例外はつきものということで。
月の明かるい夜だった。
彼は部屋の明かりを消したまま、窓辺に佇んでいた。塞ぎ込んだ表情を浮かべながら、時折ため息をつき、こうこうと差し込む月明かりに照らされていた。
「何てことをしてしまったんだ・・・・・・」
声にならない声を、ブツブツとつぶやきながら、ただひたすらに悔やんでいた。どんなに悔やんでも悔やんでも、自分のしでかしてしまった過ちの大きさに、押しつぶされてしまいそうだった。
「『正しく生きよう!』、ただそれだけを心に決めて、今日まで生きてきたのに・・・・・・」
自分という人間が、悔しくて悔しくてたまらなかった。
「『ハエ叩き』で、ゴキブリを叩いてしまうなんて・・・・・・」
ふと見上げたまあるいお月さんでは、うさぎが餅を突いていた。
普段、私たちが何気なく接している新聞。
よくよく見てみると、『新』しく、『聞』く、と書く。
細かい意味合いや歴史的な背景・事情はあるとは思うが、それらを一切無視して、単純に、字だけ追って考えてみれば、おそらく大概の人が、『新しい情報を聞く』みたいな感じで、『新聞』を捉えるのではないだろうか?
でも、実際に私たちは、『新聞』を通して、『新しい情報を聞く』のではなく、『新しい情報を読んでいる』のである。
なので、本当は『新読』にしなければいけないのではないのか?なんて、思ったりもする。
しかし、『新聞』をやめて、『新読(しんどく)』にすると、読む前から、『しんどく』なってしまうような気がする。
ほっかほかのつっやつやの真っ白な握り飯ちゃんの横で、味付け海苔のノリオくんは自分の出番は今か今かと待ち構えていた。
そして、いざっ!ノリオくんの出番がやってきた!
ノリオくんは、勢いよく真っ白な握り飯ちゃんに抱きついた!
「キャー!エッチ!変態!」
握り飯ちゃんたちは警察に通報!ノリオくんは、あえなく御用となってしまった。
喫茶店などに入って、笑顔がステキな、愛想のいい、きれいな店員さんにお冷やを入れてもらうと、お冷やも本当においしい。そして、その笑顔のまま、
「ご注文お決まりでしたら、お伺いいたします」
なんて、注文を聞きに来てもらったときに、
「おネエちゃんに、お冷や入れてもらったら、ほんま、お冷やがおいしいわ。せやから、お冷やだけでええわ!」
なんて言ったら、その笑顔はどうなるものか?!一度見てみたいが、私にはできない。
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