そこの家では、常温で保存できる食品類は、風通しのよい、直射日光の当たらないところに保存されていた。
冬の寒い日。わりと長い期間、食べられずにいたので、すっかり仲良しになっていたレトルトパックのカレーくんとハヤシさんは世間話に花を咲かせていた。
「せやけど、ハヤッさん、今日はまた、よう冷えますなぁ」
「ほんまやねぇ」
どちらも今年製造された、同い年生まれだったが、ハヤシさんの方が、早生まれだったので、学年が一年上ということもあり、カレーくんはハヤシさんに敬語を使っていた。
「せやけど、ハヤッさん、こんな寒い日ぐらい、ちょっと湯に浸かりたいでんなぁ」
「ほんまやねぇ」
そんなことを話していると、ここの家の夫婦が帰ってきた。
「お父さん、お昼はレトルトでいいですか?」
「あぁ、何でもええよ!」
「ちょうど、カレーとハヤシがあるんやけど、どっちしはります?」
「ほんなら、ハヤシもらおか」
「ほんまに、お父さんは、ハヤシの方が好きやねぇ。どっちする?って、いつ聞いたかて、ハヤシやもんねぇ。そう言うたら、初恋の人もハヤシさんだったとか言ってましたねぇ」
「オイオイ、そんな昔の話で、囃し立てるなや~」
「お父さんも、そんなオッサンギャグを言う年齢に、なったんやねぇ~」
「そんな風に言うて欲しそうに、誘導しとんのん、あんたやないか!」
夫婦はそんなたわいもない話をしながら、手を洗い、うがいをし、昼食を食べる準備をし始めた。
奥さんは少しでも早く出来上がるように、湯沸かし器から熱いお湯をお鍋に入れて、さらに湯を沸かし始めた。そして、カレーくんとハヤシさんを持ち上げて、ササッと二つとも箱を開けた。
「うわっ!このおばはん!何しやがんねん!服脱がしやがる!ハヤッさん、大丈夫でっか?!」
「カレーくん!わしもあかんわ!」
奥さんには聞こえない声で、カレーくんとハヤシさんはもがいていた。
奥さんは、レトルトパックを二つとも、沸かし続けているお湯につけた。
すると、水ではなく、あるていど、熱いお湯だったので、カレーくんとハヤシさんは、
「熱い!熱い!熱いけど、ええあんばいやぁ~。ハヤッさん、どないでっか?」
「いや~、お湯に浸かるて、ええもんやねぇ~。何かこう、ホッとするっちゅうかな、そんな感じやねぇ」
しばらくの間、カレーくんとハヤシさんが、のんびりお湯に浸かっていると、ドアベルが鳴り、奥さんは「はい、はい~」と、その場を離れた。そこへ、入れ違いに主人がやって来た。すると、ほどなく、ハヤシさんが頭から持ち上げられた。
「あっ!おっさん!何しやがんねん!気持ちよ~に湯に浸かっとんのに!あっ!ハヤッさん!!」
カレーくんは必死に叫んだ!
「カレーくん!タ、タ、助けてー!あーっ!」
ハヤシさんも必死に叫んだ!
「ハッ!ハヤッさーーーん!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
カレーくんの見た光景は、あまりにも凄惨な光景だった。ハヤシさんは、頭を引きちぎられ、逆さまにされて、全身を絞るように、内臓を全部出されてしまった。
するとそのとき、玄関の方から奥さんが大きい封筒を持ってきた。
「お父さん、解剖学会から速達で何か着てますよ」
「はいよ!」
この主人は、解剖学者らしい・・・・・・。
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