その居酒屋さんは国技館並みの大きさだった。彼らは暗がりの中、行司のカッコをした店員さんに円卓席へと案内され、そこへ腰を下ろした。すると、パッと店内の照明がついた。
ウオーーー! パチパチパチパチ~~・・・・・・。
大歓声とともに、大観衆の拍手が店内に響きわたった。
「なんじゃこりゃ!」
彼らは驚いた。店内なんてもんじゃない。場内だった。土俵のデザインが施されてある掘りごたつ式の円卓に彼らは座っていたのだ。そして、その円卓を中心に、大観衆が満員御礼に座っていたのだ。まさに、大相撲の土俵の上の気分だった。
「これはすごい。お相撲さんが相撲を取っているときって、こんな大注目の中、相撲をとっているんだねぇ」
「そうだねぇ~」
「その大注目の中、僕らは勝手に飲んで、食べて、しゃべるってわけか?すごい大掛かりな飲み会だよね」
「そうだよね~」
彼らは行司のカッコをした店員さんに、それぞれ好きな飲み物、食べ物を注文をした。オーダーはすみやかに通り、飲み物、食べ物がどんどん運ばれて来た。
大観衆の見守る中、彼らもほろ酔い、飲み会もいろんな話で盛り上がっていた。そのとき、話の流れで、「大阪」のことに話題が及んだ。
「だけどさぁ、大阪の人って、ほんと、おもしろいよね」
「そうだよねぇ~」
みんなでワイワイそんな話をしていると、土俵型掘りごたつ式円卓を囲んで座っている彼らを囲んでいた審判たちから、物言いがついた。ほろ酔いだった彼らは、行司に一旦飲食を遮られ、紋付き袴姿の審判団は円卓を囲んで座っている彼らの後ろに立ち、彼らの頭の上で協議をし始めた。場内も静まり返り、審判団の協議の結果を待つこととなった。
すると、ほどなく審判団はそれぞれの席に戻り、北のウニ理事長がマイクを握った。
「ただ今の~、発言について~、ご説明申し上げます!」
野太い声が場内に響き渡った。
「ただ今の~、発言の中に、『大阪の人って、ほんと、おもしろいよね』とございまして~、それに同調する『そうだよねぇ~』と言う発言も~、ございました。しかしながら、審判団の中に、『大阪の人の中にも、おもしろくない人、いるよね~』『そうだよねぇ~』という、見解がございまして、協議の結果、『言い直し』とさせて頂きます!」
北のウニ理事長が、マイクでそう告げると、場内は再び、
ウオーーー!パチパチパチパチ~~・・・・・・。
歓声と、拍手に沸きかえった。
彼らには、酔いのさめるような緊張ムードが高まった。彼らは、「今さら悩んだって仕方がないじゃないか!」と、気持ちを切り替え、思いついた者から発言しようということになった。
「大阪の人って、おもしろい人が多いよねぇ~」
一人が口火を切って発言すると、行司が、
「正解~!正解~~!」
と、軍配を上げた。続いてもう一人が、
「大阪の人の中には、おもしろい人が多いけれど、おもしろくない人もやっぱりいるんだろうねぇ~」
と、発言すると、これまた正解の軍配が上がった。
そして、この発言のあと、大阪だけに、西の方から、大阪のおもしろくない人たちが、化粧まわしを締めて、ぞくぞくと土俵型掘りごたつ式円卓の周りに土俵入りして来た。
反省した様子で、肩をうなだれながら土俵入りして来る大阪のおもしろくない人たちは、あとが絶えなかった。
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